藤田さんは、写研にお勤めになっていたと伺いました。
そうですね。福岡にある高校のデザイン科に通っていたとき、先生に写真植字機研究所への就職を勧められたんです。今の株式会社写研ですね。レタリングが得意だったというのが理由です。1975年に入社したのですが、そこで出会ったのが、石井中明朝(MMOKL)と本蘭細明朝(LHM)です。石井明朝は写研の創業者である石井茂吉氏が制作した、同社の主力の明朝体です。一方の本蘭明朝は、当時発売されたばかりの比較的新しい明朝体でした。
これらのフォントの最初の印象はどうでしたか?
私が最初に魅力を感じたのは、本蘭明朝の方なんですよ。モダンで新しさがあり、初めて見たときはゾクゾクしたものです。いまでもあの感覚は忘れませんね。特にウェイトがLの本蘭細明朝は、1本1本のストロークが長く、クールな印象で新鮮に感じました。